2010年5月26日 掲載
第8回 働く喜びの心をつなげて
Aさんは交通事故で脳の一部に損傷を負い、「高次脳機能障害」を発症してしまいました。
この障害を負うと、人それぞれ症状は違いますが、日時や季節、自分がいる場所が分からなくなったり、感情の起伏が激しく性格が変わってしまったように見えることがあります。しかし、外見でわかる障害ではないので周囲の理解を得られにくく、就労で苦労されるケースが多くなります。
Aさんの場合は無事、職場に復帰することができましたが、注意障害や記憶障害があり、就労中、様々なトラブルが起こり始めました。その原因が「高次脳機能障害」にあることが認識できず、本人も会社の仲間もお互いが傷つく事態になってしまいました。
私が所属するNPOは事業所と障害のある人の間に入り、就労を支援する「ジョブコーチ」の派遣を静岡県から委託されています。
本人から支援を依頼されたジョブコーチは「Aさんは何ができて何ができなくなっているのか」共に働く仲間達に伝え、お互いが無理なく働けるよう、その環境づくりをサポートしていきました。Aさんは働くことで自信を回復したのでしょうか、症状の緩和もみられるようになったのは驚きでした。
企業も官公庁も障害のある人を雇用する義務が法律で決められています。民間企業については、56人の社員に対し、障害のある人を1人雇用する義務があります。この義務を果たしていない301人以上の事業所は、足りない人数1人あたり月5万円を納付しなければなりませんが、今年7月から対象が201人以上の事業所に拡大されます。
このような決まりがあろうとなかろうと、障害があろうとなかろうと「働く」喜びは全ての人のものだと感じています。働くことで自分が誰かのために存在していることを実感できるからでしょうね。
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