静岡県ジョブコーチ派遣事業2007
1.ジョブコーチ派遣事業報告
平成19年4月23日から本事業を開始し、平成20年3月26日の契約終了時までに140名、1858回の支援を実施することができた。
本事業は『浜松NPOネットワークセンター』が受託し、県内7箇所(平成19年11月より8箇所)の拠点に所属する34名のジョブコーチが、就職又は職場適応に課題を有する知的障害のある人、精神障害のある人及びその他支援を必要とする障害のある人並びに、これら障害のある人を雇用しようとする事業主又は雇用している事業主を対象に支援を行った。
支援要請があると、原則として以下のように支援を行った。
1)アセスメント
本人および施設・学校・医療機関等関係者、家族と面談して、就労上の予想される問題点、アピールできる点など、支援対象者の情報収集を行った。また、事業所を訪問し職務分析、課題分析、職場環境の評価を行い、支援計画を立てた。
2)現場支援
支援計画に基づいて支援を行った。
作業工程表、チェックシート、日報、ジグなどを必要に応じて作成し、職務遂行をスムーズに行うことができるよう工夫したほか、職場での基本的マナーの習得、コミュニケーションへのアドバイス、通勤に関して問題のある場合は通勤時の支援も行った。また、職場に対しては、職員に対し障害特性について説明を行い、仕事の内容、指示の出し方、指導方法について助言、提案を行った。
同時にジョブコーチのサポートがなくなった後も、職場内でナチュラルサポートが得られるように働きかけた。
支援途中及び終了時には個々にケース会議を行い、事業所人事担当者、現場担当者、ハローワーク、関係する施設担当者、本人、家族等と就労上の課題・支援の成果などについて話し合う機会を持った。
3)フォロー
必要に応じて、企業訪問などを行った。
個々の支援と平行して、静岡県障害者雇用促進協会・職業センターの行う講演会、ハローワーク主催の合同面接会、養護学校主催の就業促進協議会、障害者就業・生活支援センター、障害者就業・生活支援ミニセンター他福祉施設などが行う会議・セミナーなどへ積極的に参加して、障害のある人の就労支援にかかわる関係機関との連携を深めることができるよう努めた。就労支援ネットワーク富士においてはネットワーク会議を毎月主催し、ネットワークづくりの地域の中心的役割を果たしてきた。
今年度は新たなケースとして、県内に多数の店舗を持つ企業から、ほぼ同じ時期に各店舗一名ずつの新規雇用支援要請があった。それぞれの拠点が対象者の仕事内容、職場の対応法・提案内容などについて情報交換しながら、支援を行い、職場定着に結びつけることができた。
支援要請から支援開始までの時間的余裕がなく充分なアセスメントを行うことができないまま支援に入っていくことが多いため、現場支援を行いながら手探りで状況を把握していくことが多い。その際、ジョブコーチは最大限の努力、働きかけは行っていくが、本人の特性と仕事内容・職場環境のマッチングが思うようにいかず改善も望めない場合は、職場・本人双方の疲労度が重症化しないうちに離職の方向を提案することもあった。
しかし、多くの場合は、ジョブコーチが現場に入り支援対象者に作業遂行に関する支援やコミュニケーションへの支援を行うと同時に、周りの職員に対し障害について情報提供をしていくと理解が進み、定着に結びついていった。
また、経営者や人事・総務関係者は障害者雇用に理解があるが、一緒に働く現場職員の理解や協力が得られなかったり困難をかかえていることもあったので、ジョブコーチが調整役として動くことは雇用継続に有効であった。
2.ジョブコーチスキルアップ研修報告
今年度も、浜松NPOネットワークセンターと拠点代表者との間で、現在ジョブコーチにはどのようなスキルが必要であるかを考察し、講座を開催した。
電気神奈川福祉センターの志賀利一氏には、自閉症の障害特性と職業的課題について、講義をしていただいた後、ワークショップを行っていただき、理解を深めることができた。
ジョブコーチの間でも理解が充分ではないと思われていた高次脳機能障害について、支援実績の豊富な障害者生活支援センターくぬぎの里の坂口英夫氏をお招きし、障害特性・支援例をおりまぜて話していただいた。
WEL’S TOKYOの堀江美里氏には、企業アプローチの仕方と題して講演をしていただいた。本人理解、企業理解をした上で、就労に持っていくことが出来れば、定着は容易であるとのお話を頂き、そのために用いているチェックリストを提示いただき、支援の現場で活用させていただいている。
その他にも福井県のハローワーク敦賀の本多忠生氏には、障害者雇用を進める先進的な取り組みや、滋賀県の社会福祉法人ぽてとファーム事業団、佐野武和氏による事業団の障害者支援の取り組みを紹介していただき、ジョブコーチに求めるものとして様々な提案も頂いた。
(有)新日報の障害者雇用の取り組みについて、その経緯などを含めて話しを伺うことができた。また、雇用している障害者の話を聞くことも出き、ジョブコーチの役割を再確認することができた。
また、支援した会社の見学会を行い、実際の職場環境や現場の雰囲気、障害者の働く様子を見る機会を設けたり、ケース検討会を行なったりして、スキルアップを図ってきた。障害者の就労を援助する場面では、個人・家族の抱える問題、職場の問題は多様である。
一人のジョブコーチが関わることのできるケースは限りがあるが、ケース会議を行なうことによって、他者の経験を間接的に学ぶことができ、それを別のケースに生かすことも可能となる。そのケースに関わるジョブコーチも、話すことにより、問題を整理することができ、また、専門の知識と経験を持つスーパーバイザーのアドバイスや他のジョブコーチの意見を聞くことにより、よりよい方法を探り、その後の支援に結びつけることができた。
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