障害者職場定着支援事業2014
1.ジョブコーチ派遣事業報告
本事業は特定非営利活動法人「浜松NPOネットワークセンター」が受託し、その実施組織「しずおか障害者就労支援ネットワーク」の7カ所の拠点に所属する68名の静岡県ジョブコーチにより行われた。静岡県ジョブコーチは専任で活動する者は少ないが、地域に居住する多様な人材が、適材適所でワークシェアリングしながら個々の持つ経験や地元の情報を携え地域の事業所及び障害者を支援している。急な支援依頼や土日・祝日、深夜・早朝などの依頼にも柔軟に対応して成果を上げている。これらの特徴を生かし、国のジョブコーチとは場合により連携をとり一層の職場定着を目指している。
また静岡県ジョブコーチ一人ひとりが意識をもって活動するよう、昨年に続き「第2回静岡県ジョブコーチ全体会議」を開催し、支援の振り返りを行うことで県全体の支援レベルについても共有した。今年はさらに外部の専門家を招いて「静岡県ジョブコーチアドバイサリーボード」(添付資料 委員名簿参照)を立ち上げ、委員会を2回開催して意見交換し、静岡県ジョブコーチのめざすもの、課題に対するアドバイスをいただいた。それに基づき、これまでの静岡県ジョブコーチ支援のデータをもとに事例集を作り、支援スキルの共有・向上、活動の広報に役立てる予定である。また定着率をアップさせるために特別支援学校とのさらなる連携なども図っている。
平成26年度の支援実績について、就職・定着支援では、263人に3,375人日の支援を行った。雇用アドバイス支援では、81事業所に対し186人日の支援を行い、41人が就労した。合わせて支援対象者は304人、派遣数は延べ3,561人日となった。対象者一人当たりの平均支援回数は就職・定着支援では12.8回。雇用アドバイス支援では1事業所当たりの支援回数は2.3回であった。
支援対象は、就職または職場適応に課題のある知的障害、精神障害、身体障害、発達障害、高次脳機能障害等のある人、並びにこれら障害のある人を雇用しようとする事業主または雇用している事業主であり、支援要請を受けて以下のように支援を行った。
なお、支援要請は、障害のある本人、その家族、事業主、就労支援機関、ハローワーク、学校等から随時受けている。
<本年度の特徴>
雇用アドバイス支援
今年度より障害者雇用を前向きに検討している事業所に対し、ジョブコーチが支援を行うことができるようになった。
支援に至った経緯は、平成25年度アドバイザー派遣事業からの引継が39件、企業からの直接依頼が21件、障害者雇用推進コーディネーター(オールしずおかベストコミュニティ)からの同行要請6件、ジョブコーチからの依頼5件、その他施設や学校からの依頼が4件で、計81件、186人日の支援を行った。
支援内容としては、障害特性の説明、想定される職務の提案、雇用事例の提示、雇用への手順についての説明、関係機関の紹介・同行訪問等であった。
支援の結果、支援終了したものが58件、次年度引き続き支援を行う予定のものが23件となった。支援終了となった事業所のうち、20事業所で36人、次年度引き続き支援をする事業所の内、4事業所で5人、合計41人の雇用となった。
就労・定着支援
1)障害別支援対象者
今年度の障害の内訳は、身体障害30名、知的障害133名、精神障害42名、発達障害39名、高次脳機能障害7名、重複障害11名、その他1名であった。
支援回数については、30回以上は17人、最多は41回の発達障害であり、平均支援回数も発達障害が14.5回と最も多かった。次いで高次脳機能障害が13.9回、重複障害13.8回、精神障害13.6回、知的障害13.1回、身体障害8.0回であった。相談、フォローアップ支援を除き、一人当たり11~15回の支援が一番多く、全体の平均支援回数は12.8回となった。
今年度も相談先をもたない対象者から就労前の相談や転職等についての現場支援に至らない相談が17件あり、該当支援機関と連携支援した。また過去に支援した事業所にその後の様子を伺うフォローアップを24件おこなったところ、3件がすでに離職しており、5件についは再度支援が必要な状況であることが分かった。支援終了時に再支援やフォローについてお伝えしているものの、依頼の無いまま離職至るケースも見られた。
2)支援の特徴
支援依頼の経緯は年度により様々であるが、今年度は前年度に比べて障害者就業・生活支援センターと施設からの依頼が多かった。
新たに障害者を多数雇用して専属の部署を開設した企業からの支援依頼もあり、対象者個々への支援と共に雇用体制についてのアドバイスを行った。
特別支援学校からの支援依頼は昨年度に比べ増加しており、実習・就職時の依頼及び、卒業生への定着支援依頼が増加した。
2.ジョブコーチスキルアップ研修報告
雇用しても早期に離職になるケースも多く、また、障害特性に起因したトラブルをかかえた職場も多いことから、職場定着支援を行っている静岡県ジョブコーチに対する期待は年々高まっており、その期待に応えるために、ジョブコーチ一人一人がスキルアップしていくことが求められている。
今年度は、テーマを5つに分けてスキルアップを行った。
作業支援の向上
コミュニケーション能力向上
聴覚障害者、発達障害者、精神障害者、高次脳機能障害者への支援力向上
ナチュラルサポートへのスムーズな移行
困難事例に対する支援策の検討
3.職場定着支援者養成研修
「障害者の就労と雇用を支援する人のための研修2014」という名称で、9月から10月にかけて5日間、身体・知的・精神障害等の特性や職業的課題、就労支援者としての支援技術や心構え、制度、関係機関の取り組み・連携などについて学ぶ18講座(計1480分)を開催した。講師にはそれぞれの専門家、現場担当者を招いた。一講座からの受講を可能とし、企業の障害者雇用担当者や障害者就労・雇用支援関係者及び支援活動を希望している者等68名に対し、知識習得の場を提供した。全講座の8割を受講した43名に修了証書を発行した。
開催日:平成26年9月20日、26日、27日、10月2日、3日
実施場所:浜松市福祉交流センター
参加者 :68名
4.その他の関連事業
本委託事業とは別に今年度「しずおか障害者就労支援ネットワーク」が取り組んだ活動として以下のものがあげられる。
1)講演及び会議に関する活動
個々の支援と平行して、障害者職業センターの行う講演会、障害者就職面接会、特別支援学校主催の就業促進協議会、障害者就業・生活支援センターが行う会議や障害者の就労・雇用に関する会議、セミナーなどへ積極的に参加して、関係機関との連携を深めるよう努めた。
また、研修会・セミナーの講師として、障害者雇用に係る講義や静岡県ジョブコーチの活動の紹介を行っている。
2)障害者職場定着支援者養成研修修了生に対する実習
障害者職場定着支援者養成研修修了生の内、拠点に所属し、静岡県ジョブコーチとして活動を希望する者に対し、静岡県ジョブコーチ支援現場等での実習を行った。実習に進んだ5名の内1名が実習を修了し登録を済ませ、残り4名は現在も実習中である。
3)静岡県ジョブコーチ アドバイザリーボード
外部の有識者をメンバーとした委員会を11月と3月に開催。静岡県ジョブコーチ活動の報告と今後の方向性へのご意見、現場支援へのアドバイスなどいただき、それぞれの委員からは最新情報なども伺うことができた。
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