2016
貧困の子ども支援 浜松はじめの一歩連携事業
不登校や障害者、ひとり親、外国にルーツをもつ子どもたちの教育支援等の様々な専門領域をもつ10の市民活動団体とネットワークして実行委員会を立ち上げ、子どもの生活や活動範囲に合わせた多様な支援を複合的・総合的に行える環境としくみづくりに取り組みました。(独立行政法人福祉医療機構 H28年度社会福祉振興助成事業)
事業の柱は、1)家庭・福祉・教育などに関する相談、2)野外体験を育んだり、食事の提供がある安心できる居場所づくり、3)子どもの状況や特性に合ったアウトリーチ型の学習支援、4)食料の循環のしくみをつくるフードバンクのパイロット事業、5)子ども支援制度や相談窓口の情報冊子の作成 の5つの事業を行いました。
子どもの貧困の背景には、障害やDV、外国籍、複雑な親子関係など様々な問題が複合的に絡んでいるため、連携団体や関係団体がそれぞれの得意分野を理解し、信頼関係を構築したことで、当事者の発掘から支援につなげる道筋が見えてきました。またアドバイザーとして参加したスクールソーシャルワーカー、コミュニティソーシャルワーカーとの連携も支援の助けとなりました。
連携団体:子ども育ちレスキューネット、フラットアイ、ミュミュ・ワークショップ、コミュニティカフェ・Jimicen、NPO法人えんあって、グループティオ、しずおかパソコンボランティアねっと西部、NPO法人サステナブルネット
協力団体:浜松市社会福祉協議会、NPO法人遠江、NPO法人POPOLO
柱立て1:実行委員会
目的:1)本事業に関わる各連携団体の活動進捗を共有する。
2)活動の中で表出した新たな課題等について専門家の意見を聞きながら、ネットワーク力を生かして解決策を見出す。
内容:会議を開き、相談支援の経過や結果を共有し、相互に連携活動を実施するための報告・連絡・相談。全体で推進事業の進捗状況を共有、課題に関わる専門家からのアドバイスや意見交換を行いました。また、メーリングリストで、報告・連絡・相談も随時行いました。
実施日:計7回 7/22、8/25、9/29、10/27、12/22、2/6、3/17
場所:ハルカムビル3階会議室
対象者:連携団体の担当者1名、アドバイザー4名(浜松市社協のコミュニティソーシャルワーカー、浜松市教委のスクールソーシャルワーカー、浜松市発達医療総合福祉センター小児科医、生活困窮者支援活動実践者)、実施団体1名
参加者:7月16名、8月14名、9月16名、10月13名、12月12名、2月14名、3月10名(事務局、オブザーバーを含む)
連携団体の役割:7連携団体が実行委員会へ参加し、報告、相談、情報提供、意見交換を行う。
柱立て2:相談支援(福祉的配慮・教育的配慮)
目的:貧困問題を抱えた、受援力のない多様な子どもたちの悩みや不安を解消し、それぞれの特性や生活環境を検証して、自立に向けた適切なサポートを進める。
内容:1)貧困問題を抱えた子ども・保護者を含む支援関係者等との面接やケース会議を行い、支援を計画し、必要な支援・制度につなげました。2)子どもの居住地やニーズに合わせて、居場所や学習支援、連携団体の支援につなげました。
実施日:2016年7月~2017年3月 随時 計103回
場所:当事者自宅、公的施設、支援関係者の指定場所、支援団体事務所
対象者・数:子どもの保護者・支援者 39名、子ども本人 3名
連携団体の役割:面談、支援方法検討、制度連携要請、支援方法検討、学習支援との連携要請
柱立て3:学習支援
目的:経済的に塾などに行く余裕がない家庭、また養育環境の貧困が原因で学習に力を注げない子どもたちに、自立を支える教育的環境を提供します。
内容:教科学習や自尊感情を育む習い事支援(音楽、水泳)、生活技術を育むICT(PC)指導を、アウトリーチ型の個別支援として行いました。外国をルーツとする子どもたちは、集団支援もとりいれ、“ナナメの関係”でサポートできる学生ボランティアが支援に入りました。また、講師のスキルアップと課題共有の機会として「講師会」を開催しました。
学習支援:それぞれ週1回、受験生については週2~3回 計482回
場所:子どもの自宅、支援者宅、公共施設、協力施設
対象者数:未就学児2、小学生名16名、中学生12名、高校生2名、中卒1名 計33名
(教科指導 26名、音楽 2名、水泳 1名、ICT 2名、学習法支援 2名)
スタッフ構成:元教員・現職教員・教員免許所有者・塾講師・教育カウンセラー:17名、ICTインストラクター:2名、学生ボランティア:9名、水泳インストラクター:1名、コーディネーター:事務局3名
講師会:計2回 1/24、2/27
場所:浜松労政会館 会議室(浜松市中区東伊場)
講師:1/24 児童養護施設「清明寮」 副施設長 野末鈴菜さん
2/27 神奈川県立田奈高等学校 キャリア支援センター事務局長 金澤信之先生
参加者:1/24 講師7名、オブザーバー3名、事務局3名、2/27 講師9名、高校教員2名、オブザーバー5名、事務局3名
連携団体の役割:外国にルーツをもつ子どもたちに多言語で学習支援、不登校の子どものニーズと関心に応じたPCを使った技術習得支援、相談があった家庭から学習支援要請
柱立て4:地域の居場所づくり(遊び・交流・食の提供)
目的:参加費も申し込みもいらない居場所をつくることで、様々な支援制度で救われず、つながらなかった子どもたちに出会う可能性を高める。野外体験活動を通して、安心できる地域の一員であることを伝え、自己肯定感を育む。料理づくりを通して食の提供を行う。
内容:1)野外体験活動:土器づくりを通して、子ども同士でつながりあえる遊びの場を提供し、活動の一環として食事を作って食べました。
2)料理教室「こどもキッチン」:お好み焼きなどの料理を一緒に作ることで、生活力を高めつつ、食の提供も行いました。
3)子ども食堂:親子で参加できる食堂と放課後の居場所をつくり、子どもたちの宿題など自習の場と食事を提供しました。
実施日:1)8/22、9/11、11/20、1/22、2/18、2/19 計6回
2)8/25、9/22、10/28、11/25、12/23、1/27、2/24、3/10 計8回
3)8/22、9/5、10/3、11/7、12/5、12/28(午前・午後)、1/16、2/6、2/20、3/6、3/15 計12回
場所:1)浜松市中区富塚町周辺 2・3)浜松市中区蜆塚
対象者・数:子どもとその保護者 1)129名(うち大人42) 2)62名(うち大人21) 3)117名(うち大人28)
連携団体の役割:・ミュミュワークショップ(野外体験活動):広報、ボラ募集、当日運営
・Jimicen(料理教室):広報、当日運営
・えんあって(子ども食堂):居場所と食の提供、民生委員との連携
柱立て5:フードバンク パイロット事業
目的:安全に食べられるにもかかわらず廃棄されてしまう食品「フードロス」が年間600万トンと言われている一方で、生活困窮で食べるものに困る人が存在する。この二つの矛盾を解決するために、企業や個人から余剰食品の寄贈を受けて、生活困窮者等、支援を必要としている人に適切に配り、循環する持続可能なフードバンクの仕組みづくりを行う。
内容:企業や一般市民に食品の寄贈を呼びかけ、支援団体・支援者を通じて食料を必要とする人に届けました。食品の寄贈元・提供先を開拓し、食品を運搬・保管、食品の選択・配給を行いました。また、フードバンクやフードドライブのしくみの理解、広報、協力要請を呼びかけました。
実施日:2016年7月~2017年3月 寄贈 74回、配給 55回
場所:浜松市中区葵東、浜松市東区天竜川町、浜松市中区佐鳴台<
対象者・数:寄贈-企業2社3件、フードバンクふじのくに27回、一般市民29件 計2089㎏
配給-連携団体 7団体21回、子ども食堂 1団体8回、他支援団体 4団体9回、行政(社会福祉課)2ヵ所2回、民生委員1人1回、児童養護施設3ヵ所8回、野宿生活者支援団体 2団体6回 計 1640㎏ のべ3832人
連携団体の役割:・事務局:寄贈元開拓、提供先調整、保管、運搬、広報
・他の連携団体:協力先、支援先、提供先に関わる情報提供、当事者への配給
柱立て6:支援情報冊子の作成
目的:ひきこもり、障がい、外国にルーツをもつ子など、さまざまな背景をもつ貧困の子どもたちがよりよい環境の中で育つことができるよう、支援者たちが制度や支援活動団体など社会資源の在り処を知り、それらを活用できるようにする。
内容:紙ベースとWeb(PC、スマホ)の2つの方法で情報を提供しました。生活困窮者は生活に手一杯で情報を探すのは難しいと思われるので、支援者や民生委員などをターゲットに、官民の情報を一元化し、複雑な制度はわかりやすく、困り事に応じて情報を探せる形にして、情報提供をしました。
・情報冊子の作成(社会資源に関わる情報収集、情報整理・編集)
「ほっとけない子どもの貧困 情報・相談窓口 浜松編」
・同じタイトルのWebサイトの作成 http://kodomosos.n-pocket.com/
対象者:さまざまな背景をもつ貧困の子どもたちを支援する人たち
連携団体の役割:全連携団体-情報提供、アドバイス、広報・配布
成果報告会
目的:貧困の子ども支援をテーマとした他地域の先進事例に学び、浜松における「はじめの一歩連携事業」の成果と課題について共有、情報交換することで、子どもの貧困問題についての理解者、支援者を増やす。また浜松地域で活動している人、関心のある人をつなげ、ネットワークを広げる。
実施日:2017年3月5日(日)13:00~16:00
場所:浜松市こども館分室ここ・い~ら(浜松市中区鍛治町)
参加者:支援団体、一般市民、行政、議員 計67名
内容:
13:00~13:25 主催者あいさつ
事業報告 井ノ上美津恵(認定NPO法人浜松NPOネットワークセンター)
13:25~14:25 基調講演「子ども食堂の取り組みから見えてきたこと」
米田佐知子さん(子どもの未来サポートオフィス)
14:35~15:30 分科会
1)子どもの居場所ってどんなこと?
野外の体験型イベントや子ども食堂を開催した報告と、当事者に届く情報の出し方、子どもの居場所の意義、様々な居場所とあり方について議論しました。
話題提供者:3名(ミュミュ・ワークショップ、コミュニティカフェ・Jimicen、NPO法人えんあって)
2)子どもの声をきこう
相談事業を担当した団体に持ち込まれる様々な事例の傾向や、その対応やサポート方法、どのような効果や課題があったか、という事例を共有しました。
話題提供者:2名(子ども育ちレスキューネット)
3)子どもを支える学習支援とは
学習支援事例を報告、どんな子どもにどんな支援が効果的だったか、子どもをめぐる背景やその配慮、教育+福祉の視点、無料のメリットデメリットについて話しました。
話題提供者:4名(グループティオ、たぶんかどんぐり、基礎屋、しずおかパソコンボランティアねっと西部)
4)フードバンクから見えるもの
フードバンクの目指すもの、静岡県での取り組みや浜松のパイロット事業を紹介し、食品の集め方や配分のプロセス、支援の課題について話しました。 話題提供者:3名(認定NPO法人フードバンクふじのくに、NPO法人サステナブルネット)
15:35~16:00 全体会:分科会報告、今後の見通し
各分科会で話し合われた内容や課題を共有し、今後もつながって子どもの支援に取り組んでいこうというメッセージを伝えました。