サービスラーニング実践校とそれを支えるNPO
国際交流基金の助成により、2003年8月24日~29日、与進小学校の校長先生、5年生の先生2名とN-Pocketスタッフ2名が、サービスラーニングが盛んな米国サンフランシスコを視察しました。
学校や教師も地域にHELPを求めよう
“クリッシー・フィールド・センター”というサンフランシスコにある国立公園局を訪問した。そこでは現在サービスラーニングのアフタースクールプログラム(放課後や週末のプログラム)が実施されている。
このようなプログラムを実施することになったのは、小学校の先生から“学校でできる生物のプログラムがあれば助けてほしい”という要望によるものだった。そこで、最初はこのセンターの職員が、先生と何度も打ち合わせをしながらサービスラーニングカリキュラムの研究をした。
その経験をさらに発展させ、やはり学校とCFセンターだけでは限界があると認識し、国立公園局のカリフォルニア州支部に、さまざまな分野の人が集まり(学者、地方自治体、指導主事、学校、教育委員会、先生、NPO関係者など)、委員会を編成した。
数年間のフィールド・サービスの後、約1,500万円の助成金を3年間にわたり受け、サービスラーニングカリキュラムを作成した。現在も、企業の助成やNPO、行政などとの協働によりプログラムが継続的に行われている。
また、“イースト・ベイ・チャータースクール”の教員は、サンフランシスコ湾周辺の他校教員と共に、夏休みに次年度のサービスラーニングプロジェクト現場となる山林や小川を、3日間かけて踏査し、新学期に備えるということを伺った。これも、学校と地域のNPOとの連携により実現した。NPOが学校とのサービスラーニング協働プロジェクトのために助成金を申請し、それにより学校とNPOによる事前調査の経費や教員に対する謝礼に当てている。教育委員会や、中間支援NPOなどは、サービスラーニング・ホットラインを常に開設し、教員の疑問に応えたり、アドバイスを行うという仕組みも充実している。
アメリカの学校の総合学習は多様な団体が支援
今回の視察で、米国のサービスラーニングの優れている点をいくつか発見することができたので、ここでご紹介する。
学校のサービスラーニング(総合的学習の時間)活動を支援するNPOをいくつか訪問し、改めて思ったことは、米国には非常に多くの組織・機関が、学校教育、地域教育を支えているということである。NPO単独というケースもあるが、地域の港湾局や国立公園、教育委員会、学校、企業など多種多様な組織がネットワークを組んで複合的な支援体制や、子どもたちの学ぶ環境を創り出している仕組みがあった。地域でさまざまな情報やノウハウを持った組織が連帯することにより、層の厚い新たなコミュニティーでの学びを提供していた。
このようなサービスラーニング支援体制は、単に情報提供、場所の提供、プログラムの提供などにとどまらず、州の学校指導要領に沿った内容の膨大なサービスラーニング・プロジェクト集を作ったり、放課後プログラムや週末プログラムを各地で実施したり、非常に実践的かつ多様性に富んでいる。
地域の団体がそれぞれ単独にサービスラーニングを支援するメリットもあるだろうが、やはり単独で支援するよりも、多様な組織・機関がネットワークすることにより、協力できる所や、互いの得意分野を生かし、地域での新たな学びを生み出す事により、地域も学校も持続可能な発展を遂げることができるのではないだろうか。
地域に根ざしたサービスラーニング支援団体
日本で総合的学習が導入されたのは2年程前のことで、まだまだ移行期にある。そのような中で、確かに地域の人々との接点は、単発的ではあるが、どの学校にも存在するようだ。しかしながら、それが継続的に学校や子どもたちの放課後を含めた学びをサポートするには、日本のNPO自体も脆弱であり、ましてやNPO、行政、学校、地域のネットワークも未だ築かれていないのが現状である。
さらに、米国ではサービスラーニング・プロジェクトを推進するためのサービスラーニング・コーディネーターが学区に1人は存在する。私立学校においては校内に常駐する所もあり、学校側の教育的ニーズとコミュニティーのニーズを的確にマッチングする仕組みが育っている。
このように、様々な組織が学校や地域の教育に関わる事により、子どもたちばかりか、実はコミュニティーの大人達も、次代の担い手を育てるために一役かっているという自負が芽生え、大人も地域も成長している。
私たちは、21世紀という複雑な情報化社会の時代に生きている。もはや、個人で成し得る幸福は限られていて、 「社会の多様性を生かしながらこの時代にふさわしい個人や地域社会の幸せを共に築いていく」というテーマが、 個人も社会も持続可能にさせる鍵ではないかということを、 米国のサービスラーニングに携わるさまざまな団体を通して認識させられた。
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