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安間川水辺再生まちづくり

協働の定義としてよく言われる、異なる立場の組織が主体的に関わる、得意分野を活かして共通のゴールに向かう、互いに対等でWIN-WINの関係にある、の他、さらに継続した公益的な活動を評価して、浜松市内NPO法人が行う協働事例を取り上げました。

NPO法人 浜松NPOネットワークセンター

活動概要

浸水被害を抱える川に行政と流域住民のコーディネーターとして関わり、総合治水に向けた地道な取り組みをつづけている。


はじまり

<背景・地域課題・関係者の想い>

安間川では、市街化が進み、自然の遊水地であった水田が急激に姿を消したことにより中流域で豪雨時冠水の被害が頻発するようになった。河川法改正により、河川整備計画に流域住民の意見を反映させることになったため、静岡県は協働事業のパイロットプログラムとして、川づくり構想を取りまとめるコーディネーターを公募した。
行政主導で行われた従来の意見聴取と異なり、民間・市民団体が主体となって、意識・ニーズの把握、構想づくりにあたるのが特徴で、当時、県下では実際に着手した例がまだほとんどなかった。コンサルタント会社を中心とした10団体の応募の中から、楽しくわかりやすい参加型の手法を用いたNPOの企画が選ばれ、意見集約・合意形成の試みが、長上地区を中心に始まった。


協働のパターン

  1. 経験値:前例なし、ゼロからのスタート
  2. 関係性: NPO主導・パートナー協力
  3. 事業費等:委託(公開プロポーザル)

<パートナーと役割>

  1. 浜松NPOネットワークセンター:企画運営全般
  2. 静岡県浜松土木事務所:企画運営協力
  3. 長上地区 関連自治会:広報協力

<事業の開始時期>

2001年


変遷と成果

●住民意見を反映した原案が完成

河川整備計画の策定にあたり最も重要だった点は、草案の段階から地域住民らが主体となり「市民原案」としてまとめていったことにある。
計画の当初段階においては、浸水常襲地区でありながら住民の治水に対する意識は高いとはいえず、目に見える範囲の伝聞情報によって、洪水の原因を理解し、いつか自治会や行政が何とかしてくれると待ち望んでいる状態であった。
しかし、回を追うごとに、住民のパッチワーク的な情報は次第に流域の全体像を紡ぎ始め、行政の役割だけではなく住民の役割をも自覚するように変化していった。治水計画の策定におよぶまで、住民の意識レベルがあがった結果、河川改修の規模がよりスリムになり、現代の公共事業の模範となる事例となることができた。

●自主事業による地域を巻き込んだ意識啓発

行政の委託事業と並行して、企業や財団からの助成を受けてさまざまな啓発事業を展開している。
与進小学校の総合学習と連携して、アメリカ版総合学習「サービスラーニング」を2年にわたって実践し、改修工事に際しては「地域の環境」について学ぶ小学校5年生約150人が、自分たちが貢献できることとして多自然型工法を理解したうえで、親水テラスに小石を並べて調査探求してきた川に棲む生きものをデザインした。
住民が気軽に参加できる「目に見える形で洪水を防止するツール」として、公会堂や川の隣接家庭に試験的に設置した手づくり貯留枡180ℓ(愛称「ためタル君」)は、雨水貯留の効果とウィスキー樽の美しさが好評を博し、事業は本格化できるという感触を得ることができた。
専門家の試算により「ためタル君」は川への流入雨水量の軽減や流入時間差による洪水防止に効果があること、また雨水を利用して地下水に戻す機能は、安間川の湧水の保全、地域の水循環にとって効果が大きいことがわかった。
参加型プログラム「水仙10年プロジェクト」は春の堤防への球根植え、冬のお花見ウォークラリーの2本立てで、河川里親グループと立ち上げた企画である。老若男女が集い、現場で共に汗を流す作業は、格好のコミュニケーションの場となっており、治水と環境について体験を通して学ぶ好機である。


特色

●合理的な結論

あらゆる情報が集約された結果、治水に関しては専門知識をもたない一般市民でも、総合治水の思想に根ざした合理的な計画をつくりあげることができた。

●新組織の誕生

「市民原案」をともに練り上げたメンバーの中から、4つのグループが立ちあがった。現場での啓発活動を行う河川里親(リバーフレンド)の誕生である。浜松市第1号の組織であり、丹精込めた手入れによって、浸水のストレスがなくならない限り、川を愉しむなどあり得ないと明言していた人々も、季節ごとの花々を愛でるに至っている。

●川づくりから、まちづくりへ

「治水事業に端を発した安間川の活動は、単なる土木の改修にとどまらず、いろいろな形で人々を結び付け、歴史を呼び起こし、確実に新しい地域づくりをしている」との感想が地域から上がっている。