特定非営利活動法人浜松NPOネットワークセンター

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路上演劇祭JAPAN・浜松

立案にいたる動機

浜松市民と外国人社会の二つの社会の溝はいまだ深い。彼らが希望を持って生きていける地域社会の条件を、彼らとともに模索したいと考えていた矢先に、浜松開催のお誘いを受けた。

まちの路上で、二つの社会の閉ざされたドアを、笑いとユーモアを交えて開けないか。演劇ワークショップにより、ブラジルの子どもたちが自らの問題を直視し、市民に対してオープンに表現できるように支援することはできないか。ふだんは出会わない人と人が、エネルギーや知恵を出し合い、ぶつかり、協力しながら何かを創り、他の人に伝える活動を通して新しい自己に出会う機会にしたい。これが「路上演劇祭」を開催する動機であった。

路上演劇の祝祭性、芸術性によって、市民に開かれた公共空間の新しい利用方法を提案し、音楽の都市を目指す浜松市に“多文化な表現芸術”が生まれる景気を提供したい。

もう一つのねらいであった「表現する力を持つこと」、それが市民活動の一歩であると信じてきた私たちには格好なチャンスでもあった。

(浜松NPOネットワークセンター代表(当時) 山口祐子)

路上演劇祭 Japanへの道

オフィシーナ・ブラジルの好演が光った

オフィシーナ・ブラジルの好演が光った

1992年4月、それがどんなものか何も知らないまま、メキシコ路上演劇祭に参加するために、ビデオ記録の山上千恵子と私はメキシコ入りした。私は表現の手段としてマイムを選び、修行の場として路上を選んでいただけだった。だが、メキシコ体験は、私にとって路上の意味を大きく変えた。

路上で演劇すること、それ自体が社会的意味を持ち始める。一般市民の目に触れ、シンプルで力強くならざるを得ない。ギジェルモ・ディアス氏の仕掛けるメキシコの路上演劇祭では路上に暮らす子ども達も、演劇を見せる。これは衛撃的なことだった。個人的な体験に留めておきたくはなかったが、どう伝えていったらいいかわからなかった。

1998年にギジェルモが来日し、1999年のメキシコ路上演劇祭に日本から7人参加したことから、輪が回り出した。2000年、日本での路上演劇祭開催に向けて実行委員会が動き出す。暗中模索のすったもんだ。世田谷、浜松それぞれの人脈が広がっていく。浜松NPOネットワークセンターと出合った。そして、2001年4月、それは実現した。

(路上演劇祭 Japan 実行委員長 里見のぞみ)

路上演劇祭を開催して

演劇人、大学・高校と学生たち、建築家、商店街の人々、在住ブラジル人、まちづくりに携わってきた人、写真家、メディアに関わる人……これら多様な人々が、それぞれの思いをこめて、技術と知恵と時間を出し合いながら、演劇祭を創り上げていった。そして彼らの思いは、確実に次に進むべき道につながっていった。それがなにより嬉しいし、最大の成果であった。分野を超えた人々が持つすばらしい力を、今後の市民活動にも活かしていきたい。

(浜松NPOネットワークセンター事務局長(当時) 佐藤邦子)


表現のワークショップ

地元の高校演劇部、大学、商店街と協働し、メキシコ、韓国、日本の演劇人が参加して、「表現のワークショップ」を7回開催。ストリートチルドレンやホームレスの表現活動を支援しているメキシコの演劇人は、ブラジルの子どもたちのためのワークショップを開催した。

(1)砂山のまちと人の物語 (3月18日~4月21日)

進行:成沢富雄、すずきこーた
砂山町商店街。現在サザンクロスと呼ばれ、昔は砂山銀座と呼ばれていた。かつてはにぎやかだったこの商店街も今はシャッターを閉める店も多い。そんな商店街の昔を知る人たちに話を聞いて、それをもとに商店街で演劇をする。商店街に対するいろいろな思い、浜松という街のいろいろな想いが見えてくる。

(2)アクロバットと道化(4月18日~20日)

進行/指導:モイセス・ミランダ(メキシコ)

(3)紙で衣装を作ろう! (4月18日~20日)

進行/指導:コンスエロ・ソリス(メキシコ)

(4)身体表現とコミュニケーション (4月18日~20日)

進行:里見のぞみ

(5)路上演劇の作り方 (4月18日~20日)

進行:ロベルト・バスケス(メキシコ) 海の星高校生徒対象

(6)青少年女子のためのソシオドラマ (4月18日~20日)

進行:シン・リー(韓国)

(7)ブラジル人青少年のソシオドラマ (4月18日~20日)

進行:ギジェルモ・ディアス(メキシコ) アラ・ブラジル協会


シンポジウム 「路上演劇  -表現すること、人と出会うこと-」

  1. 日時・場所:2001年4月21日 静岡文化芸術大学
  2. パネリスト:ギジェルモ・ディアス、シン・リー、里見のぞみ、成沢富雄、ジルソン・サントス、高田和文
  3. コーディネーター:伊藤裕夫

路上公演

浜松の演劇人、ジルソン氏が率いるブラジル人劇団がすばらしいパフォーマンスを見せた

浜松の演劇人、ジルソン氏が率いるブラジル人劇団がすばらしいパフォーマンスを見せた

浜松駅前のギャラリーモールで行われた「路上公演」では、多数の市民とともに公共空間で「多文化社会の豊かさ」を共有、実感した。

「オフィシーナ・ブラジル」の秀逸な演劇に、その後、地元の大学生とブラジル人の合同の劇団が立ち上がるという波及効果も生まれた。

■ギジェルモ・ディアスと仲間たち(メキシコ)

闘牛士や歌姫、牛や馬の出てくるコミカルな作品

■モイセス・ミランダ(メキシコ)

身体を使った大道芸。ユーモアの溢れる作品が、観客やカラスも取り込み次々と行われていく

■Arts for living(韓国)

日韓の関係と教科書問題を扱った社会的な作品

■里見のぞみ(浜松)

マイムを使った作品。観客も参加させ、一緒に作り上げる。

■オフィシーナ・ブラジル(浜松)

在住ブラジル人のジルソン・ドス・サントス氏率いる劇団。言葉を使わず身体と音楽を使って、彼らに映る今の日本を表現

■砂山のまちと人の物語ワークショップ発表

浜松駅南の砂山銀座商店街の何軒かの店に取材。「昔はにぎやかな町だった」この台詞は感情ぬきには言えない。空襲の場面ではみんなハッとしていた。

■ブラジル人青少年のソシオドラマ・ワークショップ発表

浜松の在日ブラジル人の小中学生による「レストランでまずいご飯を出されたら?」「意中のあの子にアタック!」「ダンスのママと怖いパパ」「子どもになりたい先生」の四つの劇