ミューラル・プロジェクト
外国籍の高校生の思いが、江之島高校美術部の協力で力強い壁画になりました
日本イベント大賞特別賞(国際交流奨励賞)受賞!
日本イベント産業振興協会のコラム
浜松で生きる日系ブラジル人、ペルー人の高校生が、自分たちが乗り越えた困難と希望を描いた壁画(ミューラル)を完成させました。県立浜松江之島高校美術部の協力で完成したミューラルは、幅11メートル、高さ3メートルという大きさで見応えがあります。アクトシティ浜松で行われた国体イベントでは天皇・皇后両陛下の前で、ブラジル学校の生徒が踊るステージを飾りました。
作成の過程で、コミュニティ・ペインティング・デイを設け、その場で、日本人の若者たちがそれまであまり接点がなかった外国籍の高校生の背景や思いを理解できたことは、大きな成果でした。ミューラルは小中学校の総合的な学習など、国際理解教育にも応用することで、外国にルーツをもつ子どもたちとより深く理解しあうきっかけとなるでしょう。
建物の壁などに大きな絵を描いて思いを伝える“ミューラル”
Muralはコミュニティの「困難」「問題」や「希望」「誇り」などのメッセージをこめて、地域の人々と共に壁などの公共空間に絵を描く表現芸術です。メキシコで革命のシンボルとして人々を勇気づけたことから生まれ、中南米各地で歴史や文化を共有する手段として広まりました。米国でもマイノリティの表現活動や「多文化教育」に取り入れられています。
今回は初めての事業なので、建物の壁でなくベニア板18枚を組み合わせた横10.6メートル×縦2.7メートルのサイズの板に絵を描きました。組み立て可動式の“壁画”として、あちこち出前します。
浜松でミューラルをつくるわけ
2002年に主催した「外国人教育支援全国交流会」において、外国籍の子どもの不就学・不登校の問題を解決するには、子どもたちが将来に希望を持てるようなロールモデルが必要だ、という共通認識を得ました。
それを受けて「公立高校に進学した外国人生徒」に注目し、その存在やメッセージをミューラル(壁画)というコミュニティ・アートの手法を使って地域に伝え、共有しようと考えました。
同時に、作成を通して次世代の多文化共生のリーダーを育て、地域の支援団体・学校・当事者との連携を目指します。
今回のテーマは「浜松に生きる希望と、乗り越えたこと」
日系ブラジル人・ペルー人の高校生たちは、学校に行っていない子どもや悩んでいる人を励まし、夢や未来がみつかるきっかけとなるような絵を描きたい、同時に、日本の人たちにも「外国人」として生きる自分たちのことを知ってほしい、とこんなメッセージを絵に盛り込みました。
- 家族の愛に包まれて、生まれ育ったこと「あなたは一人じゃない」
- 出身地ブラジルやペルーの風景と、そこから日本にやってきたこと
- 進路に迷い、「どうしたらいいの?」と悩む子ども
- 学校の風景、学ぶことで将来も見えてくる「今は未来のために」(3ヶ国語で)
- 言葉や差別といった「壁」の前で、バイクやゲーセンに群れている姿
- その「壁」を壊す人、飛び越える人の姿
- 一人じゃない、友人・仲間がいるよ!「あきらめないで」「夢をかなえよう」のメッセージ
- 将来の夢と光 (建築家、幼稚園の先生、通訳、歌手など)
中心メンバーは、外国人高校生9人+江之島高校美術部のみなさん
県立高校(浜松城南、浜松北定時制、湖西、江之島)に在籍する8人のブラジル人、1人のペルー人生徒が作成に関わりました。
絵画描写やレイアウトに関する部分は、県立浜松江之島高校美術部のみなさんにお世話になりました。
そのほか、彼らと同じ高校の在校生や静岡文化芸術大学の学生も関わりました。
作成のプロセス
2003年6月 | 外国籍の生徒の通う高校を訪問し、参加者を募る。 |
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7月 | ワークショップやミーティングを重ね、ミューラルの絵に盛り込むメッセージや素案をまとめる。 |
8月 | 代表の高校生4名と協力者の美術教師と、米国サンフランシスコを視察。ミューラル・アーティストのケンダルさんからミューラルの歴史や手法を学ぶ。 |
9月 | 静岡県立江之島高校美術部の協力で下絵を完成。 |
10月 | ケンダルさんを浜松に招き、コミュニティ・ペインティング・デイ開催(10月11~13日)。市民も参加して、みんなで壁画に色を塗りました! 江之島高校で「コミュニティ・アート」のセミナー開催。完成後、国体イベント(10月25日アクトシティ浜松)に出展。 |
11月 | 静岡文化芸術大学の学園祭(11月1~2日)で展示・解説・ワークショップ |
12月~2004年2月 | 浜松まちづくりセンターで展示 |
4月~6月 | 国立民族学博物館 特別展「多民族ニホン」に出展! | 2005年1月 | 日本イベント大賞特別賞(国際交流奨励賞)受賞! |
高校生のアイデアを、江之島高校美術部が絵におこしました。(下絵)
この事業は日米の団体・企業の協働で行いました
- 主催:浜松NPOネットワークセンター(N-Pocket)
- 協働団体:American Friends Service Committee(AFSC)(米国のNGO)
- 支援団体:日米コミュニティー・エクスチェンジ(JUCEE)
- 協力:静岡県立浜松江之島高校、静岡文化芸術大学
- 助成:JUCEE、日本財団、静岡県国際交流協会
- 協賛:ぺんてる、リキテックス/バニーコルアート、クサカベ、ターナー、ターレンスジャパン
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