なぜ今、NPOの労務が問題なのか?
活動者?労働者?の意識の乖離
今年5月末でNPO法人数は50,169。2013年度と14年度の内閣府NPO法人実態調査を比較してみると、有給職員を抱える法人は67.8%から76.1%と確実に増加しており、NPOで「働く」ことについては一般的なものになってきましたが、実は様々な課題が残っています。
大きくあげられるのが、「活動者か、労働者か?」という意識の違いです。これによって、労働法とNPO側の実態の乖離が起こっています。
どういうことかというと、NPOは基本的にボランティアが主体的に参画する場と認識されており、活動歴の長い立ち上げ期からのメンバーは「ミッションへの共感」がNPOで働く源泉となっています。
従って「労働者」ではなく、「活動者」の認識を持っていることが多いのです。その「ボランタリーな想い」が労働契約について曖昧さをもたらしており、労働者の権利についての関心が薄いことが多く見受けられます。
労働法上、「労働者」は定義されていますが、「ボランティア」は定義されていません。労働者保護という労働法の観点から、一定の「定期的・有償ボランティア」は「労働者」に整理すべきと考えられるようになってきていますが、実態をどのように認識するかについて関係者の戸惑いがあります。
NPOの働き方に合わない労働法
実際に、NPO活動においては、委託事業・助成金などで財源を確保している事業と、財源がない中、自主事業で実施している事業とが混在しています。
人件費が確保できなくてもミッションに合わせて動くことも多く、一人の人材が一つの団体の中で「この活動はボランティア活動」、「この業務は有給職員としての活動」と複数の顔をもって関わることも少なくありません。
このように、一日の中に有給職員としての活動とボランティア活動が混在している法人において、スタッフ自身が「労働」か「活動」かを判断して関わっていても、労働基準局は時間的にはみ出したボランティア活動分は残業であるとみなした例もあります。
好きでやっているから無償でいい?
さらに、NPOセクターを次世代に渡していくために解決したいのが、社会のNPOへの誤解です。「好きでやっていることだから、賃金は無償・低廉であろう」というものです。
ある社会企業家がこんなことを言っています。「私たちは他人を助けるために大金を稼ぐ人・考え方に拒否反応を起こします。興味深いことに、人々を助けずに大金を稼ぐ人には拒否反応を起こしません。」
NPOの第一世代からの世代交代が課題として認識されるようになっています。NPOで働きたい若者も一定数いるものの、賃金や雇用期間が不安定な実態から、NPOの労働環境に不安を感じる人も少なくないでしょう。人材確保の面からも、労働環境の改善の必要性は高いのです。
行政と企業だけではやっていけないこの社会に、なくてはならない存在となったNPOセクターを次世代に渡していくには、若い人たちも安心して活動できる環境整備が必要です。