2006年度 (実施)
ケアする人の何でも相談会報告書
1.「市民協働 たねからみのり」自由部門に事業提案書提出(2005.07.15)
1)テーマ
福祉協働センター“アンサンブル江ノ島”の機能強化の為の「行政と異分野専門家集団によるなんでも相談会」開催事業
2)解決しようとしている課題
当該施設は、知的・精神に障害を持つ人々の生活就労支援という複合的目的を持つグループホーム、デイサービス、相談施設であるが、協働の理念を具現化する事業を実施したい。そこで、生活・就労支援に関わる行政・NPO・民間の専門家集団によるワンストップ相談会を開催し、複雑化した福祉諸制度を効果的に活用できる新たな相談体制を創造すると共に、福祉協働センターの役割を広く市民にPRする。
3)事業内容
この秋にグランドデザインの具体的指針が公表されるなど、福祉施策は転換期にある。一方、一人の専門家では対処できないほど複合化した一人ひとりの障害者の抱える支援策を、異分野の相談に関わる専門家のネットワークにより解決するために、事前予約した障害者を対象に1日相談日を試験的に開催し、有効であれば、継続事業にする。
4)予算
161,700円
5)実施体制
- 企画運営は浜松NPOネットワークセンターが行う
- 広報は、行政担当課(障害福祉課・精神福祉室・労政課)と協力
- 育成会、施設利用者と連携して相談を掘り起こす
- 相談は「何でも相談ネットワーク」に集う専門家の協力を得て実施
- 福祉事務所など行政の相談体制とも連携して相談会を開催する
6)期待される効果
複雑・専門化する福祉施策の全体像を描くことは一人の専門家の力量を超えるため、多様な相談に対応可能な民間人材と行政担当者が連携するネットワークが形成されると、障害を持つ人たちに効率的かつ横断的な支援体制を築くことができる。この連携により、浜松市全体の福祉施策が、有機的につながる可能性を期待できる。
浜松市市民協働「たねからみのり」とは
市民協働とは、市民、市民活動団体、事業者、浜松市が、考え方や行動が違っていても、それぞれの特性を生かしながら、共通の課題や目的を達成するために、様々な観点や仕組みで取り組むことをいいます。
浜松市では、平成15年4月に「市民協働推進条例」が施行され、市民が望むまちづくりを目指して、多様な協働の主体が、互いの違いを認めた上で、多元的に取り組むことが可能になっています。
「市民協働 たねからみのり」は、市民、市民活動団体、事業者、浜松市が、お互いの提案に基づき、地域の課題の解決を図ろうとする事業です。
2.フォローアップ 第1回開催(2005,08.23)
1)参加団体名・参加者氏名
浜松養護学校・蛭間、社会保険労務士・藤澤、だんだん・伊藤、ウィズ・斯波、くるみ共同作業所・永井、市民協働推進委員・赤池、島村、障害福祉課・大木、保健予防課・鈴木、労政課・野中、山田、行政経営課・岡部、鈴木
2)検討内容
- 現在でも同様の相談会の開催は行っているが、有機的に相談情報がかみ合い、一人の複合的な課題に対処できてはいない。
- 各種の相談機関を市民の共有財産にするには、どういうしくみが必要か検討が必要。
- 現在ある生活支援センターのネットワーク化を第一歩にして、その役割の質の向上と情報の共有を解決するために「何でも相談会」を活用できるのではないか。
- 相談会を遠隔地の“アンサンブル江ノ島”で開催する意義は何か。具体的に協働の中身を実践することが求められている。
- 相談会の持ち方について、再度協議が必要。
- 障害を持つ人が相談会に出かけてくれるような周知の方法とは何か。足は?
フォローアップとは・・・
公開検討会に向けての提案者と市の関係課等との調整期間です。フォローアップは、提案者、市の関係課、市民協働推進委員会委員、行政経営課、まちづくりセンター、その他関係者が参加します。
提案内容に関する情報収集や市の関係課との打ち合わせを通して、事業の公益性を確認するとともに、より広範な関係者の巻き込みを通して、協働の可能性を高めます。
さらに、事業化の可能性を検討し、課題等を整理、調整。
3.検討結果説明会における庁内検討の結果発表(2005.10.1)
1)提案に対する今後の対応
浜松福祉協働センター「アンサンブル江之島」を障害のある方はじめ、多くの市民の方が気軽に相談できる場とするためには、障害の種別を問わず、総合的に相談できることが重要であると考えます。
また、障害者の就労支援にあたっては、その前提として日常生活の安定が不可欠と考えます。このことから、「アンサンブル江之島」の機能強化をはかるための方策の一つとして、提案の、各専門家による「一日相談会」を試行的に開催するための事業費について、平成18年度当初予算案に盛り込んでまいります。
同時に「アンサンブル江之島」で事業を実施している各法人が互いの活動内容や役割を理解し、連携を深めることで、福祉協働の体制が構築できるものと考える。これらを踏まえ、今後も関係者による勉強会を継続して実施する必要があると考えます。
2)その理由
障害のある方の総合的な相談窓口である浜松福祉協働センター「アンサンブル江之島」の役割を広く市民にPRするために相談会開催が有効であると判断いたします。
3)その他特記事項
すでに行なわれている「アンサンブル江之島」の就労支援事業やマネジメント事業が、関係機関とのさらなる連携が進むことにより、課題の解決につながっていくと思われます。
2006年7月より
* アンサンブル担当者会議に7月より事業担当者もオブザーバーとして加わった
* 担当3課とN-Pocketで委託業務契約書・仕様書作成のための協議
4.企画案
1)テーマ
複合的な問題があるゆえに、特にケアする側が解決できないでいるケースの「なんでも相談会」及び「行政(複数部署)と異分野専門家集団によるケース会議」を開催
2)目的
- 横断的システムの構築:福祉協働センター・アンサンブル江之島の機能パワーアップをはかりながら、対応部署が複数にまたがる問題に対応できる、浜松市としてのシステムを模索する
- 情報の共有:福祉的支援活動をおこなうために「成年後見制度」「発達障害児者対応」「特別支援教育」など比較的新しい動きに関わる詳細な情報が、専門外であっても必要になる場合が多い。午後の部の複数部署の行政マン及び異分野専門家集団によるケース会議においては、これらの新しい動きに関わる具体的な活用の方法を問題解決のための討論上で互いに情報交換できるようにする
3)主な対象者 当事者⇒ケアする人々
ケアする人々(福祉施設指導員、ヘルパー、学校教員、ジョブコーチ、民生委員…)
当事者・家族・支援者・周辺の人々…
4)プログラム
午前 ブースを設けて相談をうける
午後 受けた相談のうち、回答がだせなかったものについて専門家集団によるケース会議
* 十分な相談数がない場合のために事前ヒアリングを福祉関係者に対して実施し、抽出された課題を専門家会議にあげる
* 委託契約を交わす 8月1日付
5.福祉関係者事前ヒアリング(2006年9月~11月)
事前ヒアリングから抽出された主な悩み
ヒアリング件数16件
おこなった対象機関:民間障害児学童保育所、知的障害者リハ施設、知的障害児者当事者団体、視覚障害者当事者団体、フリースクール、児童・知的・身体居宅介護事業所、精神保健福祉支援団体、精神障害者授産施設、私立高等学校、子育て支援団体、精神保健福祉士、障害者就労支援団体、市教育委員会、知的障害児養護学校
複数の問題を抱えている人の支援連携をどうしたら実現できるか
- 養育歴、家庭介護力、軽度知的障害、就労支援ニーズなど、複数の問題を抱えていた人の支援関係機関があつまることができたのはすばらしかったが、取りまとめ役がはっきりせず、支援会議が継続できなかった
個人情報保護条例のバリア(必要以上の管理がされていて誤解も多いのでは)
- 社会福祉施設を利用していない、または障害者当事者団体に入っていない人には必要な社会資源に関わる情報が伝えられない
- 教育・生活環境を整えるために必要な個人情報を、関係機関からどこまで手渡してもらえるのか
社会福祉施設を利用してこなかった人は既存の社会資源を利用しにくい
- 養護学校から直接就労した人が離職した場合など、居場所の確保についても、グループホームの利用者としても優先されず、とりこぼされがち
制度外の社会資源の発掘が十分にできていない
- NPOやボランティア活動によるサービスで、支援時に利用できるものがあったかもしれない
心の病をもつ人が医療現場から地域社会へ移行するための社会資源が不足していて、支援しきれない
- 軽度発達障害の子や心の病をもつ子どもたちの多様な居場所が不足
- 受診者と主治医のコミュニケーションができず、施設を利用するまで重度でない人の行き場所がない
軽度発達障害のある義務教育期間外の子どものための教育支援機関の不足
- 発達障害の子どもを受け入れていた定時制高校の数が減少し、進学のための多様な選択肢がなくなってきている
- 精神障害回復後の青年が定時制高校入学を希望したが。支援しきれなかった
- 高機能自閉症など高校にはいってから見えてくるが、学校現場では支援しきれない
障害をもった子どもが幼稚園に入るときの窓口の支援力不足
- 障害幼児教育実施園ときいていたが、実際には受け入れがなされず、一つずつ聞いて回った
高齢等が理由で介護力をなくした親と障害のある人の同居希望をいかに叶えるか
- 重度知的障害のある人と、その祖父母の同居により共倒れになる心配があり、24時間体制の支援が必要となったが、支援しきれない
- 緊急措置で施設入所している娘が、特養に入っている80歳の認知症の父親と一緒に自宅で暮らしたいが、成年後見人となっているおじと意見があわず、希望を叶えられない
- 家族の問題ゆえに、緊急避難的に鍵で管理されたアパートで一人暮らしをしている重度知的障害の人には、24時間の支援体制が必要だったが、支援し切れなかった
言語のバリア(在住外国人)
- こころの病を持った人には、コミュニケーションで治療していくので致命的
- 学童保育時に、学校からの情報を共有できない
* 上記9つの項目に対して、障害福祉課より回答がだされました。(当日資料として配布)