2009年度
NPO法人会計基準をつくろう in 浜松
NPO法人には会計基準がありません。会計報告書の形はそれぞれ違っています。
社会から信頼されるNPO法人になるために、その会計報告書のあり方を考え、自分たちの手でその会計基準をつくろうと、2009年3月、全国のNPO支援団体による「NPO法人会計基準協議会」が設立されました。協議会では、専門家の協力も得て、会計基準案策定作業がNPO全体に関わる大切なしくみづくりとして全国規模で進行中です。
浜松でも中間報告案についての理解を深め、意見を広く募集するため、東京を皮切りに全国10数カ所で開かれている全国キャラバンの一環として、専門家、NPOなど30名近くが集まり、11月14日に発表され12月31日までパブリックコメントを募集中の「中間報告案」についての意見交換会を開きました。
市民参加型でつくる「NPO法人会計基準」意見交換会
日時 | 2009年11月29日(日) 午後2時から午後4時 |
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場所 | 浜松まちづくりセンター 2階会議室 |
内容 | NPO法人会計基準策定の経過と「中間報告案」のポイント説明 とことん、聞きます! みんなの意見(質疑・意見交換) |
主催 | NPO法人浜松NPOネットワークセンター NPO法人会計基準協議会 |
■中間報告 報告者及びグループワーク対応委員
- 加藤 俊也さん(NPO法人NPO会計税務専門家ネットワーク、NPO法人会計基準策定委員・NPO法人会計基準サンプル専門委員・NPO法人会計基準策定協議会事務局長)
- 早坂 毅さん(税理士法人早坂会計、N-Pocket理事、NPO法人会計基準策定委員・NPO法人会計基準サンプル専門委員)
- 戎井 重樹さん(監査法人エムエムピージー・エーマック、NPO法人会計基準サンプル専門委員)
- 中尾 さゆりさん(NPO法人ボランタリーネイバーズ、NPO法人会計基準サンプル専門委員・NPO法人会計基準協議会メンバー)
■Aグループ意見交換会
- 参加者:
- NPO法人は必ず申告(税務)しなければいけないのか
- 委員:
- 県庁(行政)への事業報告は必ずしなければならない。収益事業をやっていれば税務申告をしなければならないが、行政に対する申告を混同する場合もあるかもしれない。税務上の申告は必ずしなければならないという訳ではない。
- 参加者:
- 前年との対比よりも予算に対しての支出額ではないのか
- 委員:
- 平成15年に予算はすでに廃止されている。法律上の義務付けはない。「予算と実績」として数字を出す必要はない。
- 参加者:
- 複数の事業を行っている場合に活動名を記載するのか、「その他の活動」として記載するのか
- 委員:
- 複数の事業を区分して出すのではなくいっしょにまとめてよい。特定非営利活動とその他の事業として分ける必要はある。NPO法人内で区分した方がよいならばそのように管理したらよい。会計基準で規定するのではなく団体の判断となる。
- 参加者:
- 収支計算書の「借入金の扱い」が団体によって違うが一致した方がよい。借入金を収入に入れるのか。基準をひとつにしてほしい。(静岡県NPOアドバイザー)
- 委員:
- 専門家の指導のもとでも借入金を収入にいれているところとそうでないところがある。今後、明確にしていく。
- 参加者:
- 委託事業の事務管理費の扱いはどうするのか(静岡県NPOアドバイザー)
- 委員:
- 基準はない。事業をするために活動しているNPOとしては、管理費はすべて事業のためという解釈があるが、区分がわかりにくいとこもある。だからこそ基準が必要。行政への報告書の関係もあり、管理費を委託事業に含めるということもあるだろう。公益法人関係でも事務管理費として事業に振り分けもよいとなりつつある。状況によって取り扱いが変わってくるのではないか。
- 参加者:
- ボランティアの役務の提供は会計の中に取り組むべきではないと考える。人的対価はあくまでも犠牲となったコストで測定すべきであり、NPO法人以外にもボランティアの活用があるが会計の中に取り入れていない。(公認会計士)
- 委員:
- 延べ労働時間で活動の規模を測り、事業計画をたてる材料とするという考え方もあり、時間計測は必要という話がある。会計に入れるべき、いれるべきでない、等さまざまな意見があり、これからの議論になる。
- 参加者:
- 現物寄付が少額の場合は受贈益を計上しなくてもよいとされているが、その場合は固定資産台帳に備忘価格で計上して簿外処理とせず、寄付物件の管理に当たることが必要と考える。(公認会計士)
- 委員:
- 載せないよりは載せた方がよい。しかし簡素にという声もある。厳密に買い物時のポイントカードも計上している団体もある。
- 参加者:
- 財産目録を財務諸表の範囲から除くことが必要であると考える。NPO法人において、平成20年公益法人会計基準と整合することが望ましい。(公認会計士)
- 委員:
- H20年公益法人基準は、公益認定と判断する手段なので16年基準と整合するという方がわかりやすい。
- 参加者:
- 貸借対照表においても、必要があれば区分をして収支の情報とともにそれと表裏一体となった財務状態の情報も区分することが望まれる。(公認会計士)
- 参加者:
- 無償による施設の提供は、それが単発的に行われていれば会計に折り込まず、常時継続的に行われていれば会計に反映するかまたは注記における開示も必要であろう。(公認会計士)
- 参加者:
- ボランティアの公益性の判断は
- 委員:
- 公益法人においてのボランティアのコストについて、公益性を認定するときに会計処理に含めることになっている。ボランティアの労働を一定の形で測定する仕組みは公益法人ではできている。
- 参加者:
- 会計基準を所轄所への報告書類と一致させてほしい。
- 参加者:
- 小規模法人用のサンプルはあるか(税理士)
- 委員:
- いまはない。このような要望があれば検討していくことになる。
Bグループ意見交換会
- 参加者:
- 収支計算書は絶対必要。活動計算書は採算性をみるもので、これも必要ではあるが、お金の収支はどうなのかもみる必要がある。これは会員にとって重要。収支計算書という名前で活動計算書のようなものをつくる場合もあるし、経常収支をわけてないところもある。静岡県の場合は内閣府のサンプルと違って、細かくないのでばらばらになっている。収支と資産増減がわかるようなものが必要。収支と資産増減と、活動の成果による収益・コスト、この3つがわかる決算書が必要。この3つの報告書をつくるのはNPO法人にとって大変な仕事だけれど慣れればできること。(公認会計士)
- 委員:
- 収支は会計の基礎ではある。しかし、それだけでは活動の内容がみえないので、それもみえるように、というのが今回の策定の目的にもなっている。三つ作るのか、ということとどう折り合いをつけたらいいのだろうか考えなければならない。例えば、減価償却の部分。移送サービスの事業で例えると、お金の出入りだけを表すなら、購入した年に100万の車を買ったことが数字で表れるのみ。その後、5年間で毎年20万ずつ車を使って事業をやっている、ということを見せる減価償却という会計のテクニックが必要。逆に活動計算書だけだと毎年の20万という数字はでるが、買ったときの100万がでない。車の購入が大事なことなら、注記ということで記載をする、という方法もあるのではないか。
- 参加者:
- 授産施設会計基準とNPOの会計基準の整合性はどう考えればよいか。二重の書類作成になってします。(NPO設立アドバイザー)
- 委員:
- 福祉系の事業については社会福祉法人、株式会社、NPO法人と多様であり、会計基準もばらばら。例えば、法人格に関わらず、介護事業の会計基準は同じほうが分りやすい、という意見もある。「介護事業をやっているNPO法人については、こうしよう」という取組もすべきかもしれないが、まずは今回の基準策定が行われた後と考えている。
- 参加者:
- 静岡県の場合は簡略したものをサンプルとしてだしているが、内閣府の一取引二仕訳を含む複雑な報告書を提出している団体はどれほどの数のものが正確に表記しているのか(静岡県NPOスタッフ)
- 委員:
- 内閣府の手引きで正味財産増減の部を入れているのは、貸借対照表と一致させるためだが、実態調査では、かなりの団体で数字が一致していないものがあることがわかっている。
縦においていた正味財産増減の部を横におくと、企業会計と同じになると考えられるが、企業会計には出てこない、ボランティアをどうするかとか、寄付をどうするかといった問題のことも考える必要がある。
- 参加者:
- 企業会計の運用でいいのではないか。法人化した後、事業の継続を考えた場合、事業別の損益が把握でき、どんな経営状態か、資金繰りはどうかを把握することが大切。様式の3と4が組み合わさった形で企業会計をベースで考えたらいいのではないか。(NPO)
- 委員:
- 会計ソフトを使用すると、現金や預金の動きを入れていけばできてしまうので簡単。NPO会計ソフト会社にも協力を要請している。正味財産増減の部の上のところまでは簡単。現金預金の入出金とサービスの発生時期にタイムラグがあるところ、例えば、減価償却などの部分が難しい。事業ごとに状態を把握しようとすると、会計処理に時間を要するが、敢えて取り組み、NPOの体質を強化する、という点も考える必要がある。なお、様式4は使途指定の寄付金がある場合なので、この問題とは無関係。
- 参加者:
- ボランティアをどう考えるか。行政がボランティア=無償と考えていることの弊害が大きい。管理費を全くつけないとすることが多い補助金や助成金との絡みも大きいので、理解をしてもらうためにも、時間がかかっても確立してほしい。(NPO)
- 委員:
- ボランティアをお金で換算することの是非と、技術的に難しい点の両方がある。集計は大変だ、単価をどうするかが会計上問題。共通の単価を使わないと比較も無理。
- 参加者:
- 会計王を使って会計処理をやっていることでNPOの会計について理解できてきた。(NPO)
- 委員:
- 会計ソフトについては、ユーザーからの改善提案が来ることによって、つかいやすくなっているようだ。
「とことん聞きます!!みんなの意見」全国キャラバン2009
- 11月14日 東京 NPO法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会
- 11月27日 大阪 大阪ボランティア協会
- 11月28日 名古屋 ボランタリーネイバーズ
- 11月29日 浜松 浜松NPOネットワークセンター
- 12月1日 千葉 ちば市民活動・市民事業サポートセンター
- 12月5日 福岡 NPO会計税務支援福岡
- 12月6日 佐賀 佐賀県CSO推進機構
- 12月7日 北海道 北海道NPOサポートセンター
- 12月8日 仙台 杜の伝言板ゆるる/せんだい・みやぎNPOセンター
- 12月上旬 茨城 茨城NPOセンター・コモンズ
- 12月12日 広島 ひろしまNPOセンター
- 12月22日 神奈川 税理士による公益活動サポートセンター
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