公開質問状の回答 山下昌利議員
公開質問状に対するお答え
太田川からの受水問題には長い歴史があります。
昭和49年の七夕豪雨の際、太田川は、各所において堤防が決壊し、袋井市を中心に甚大な洪水被害に見舞われました。そして考えられたことが、太田川の上流に防災ダムを作る構想です。ところが当時の建設省が、防災目的だけのこの事業を認めなかったことから、利水も含めた多目的ダムとして、再度国に働きかけ、好感触をえたことから太田川からの受水問題がはじまりました。
天竜川左岸での必用量だけでは事業採択が困難なことから、天竜川右岸の浜松市やその周辺にまで受水を強く働きかけ、(県事業への協力を要請)事業採択に漕ぎ着けました。
当時の浜松市は、産業活動も財政も右肩上がりで、将来的にも大きく発展していくだろうという考え方をしていました。予測人口は100万人、産業も発展して、水の需要はさらに必要になると予測し、2万トンの受水に応じました。当時の議会では、遠方の太田川から受水しなくても、太田川の水は天竜川左岸で使い、その分を天竜川右岸に回す、天竜川右岸は左岸で減らした分を使わせていただく、という考え方をしても良いのではないかと申し入れをしましたが、一笑に付されてしまいました。今後の水需要に対する明快な予測を示され、受水の必要性を説明されましたので了承したのです。
その後、社会情勢に大きな変化が生まれてきました。
バブル経済の崩壊にはじまる経済活動の停滞です。これによって財政は縮小に転じ、あわせて資源循環型社会の構築が喫緊の課題となってきました。環境への関心も今まで以上に高まり、家庭における節水思想や節水型家電製品の開発・普及によって、水需要の伸びは鈍化してまいりました。
平成11年には、太田川受水量について見直されることになり、当時の議会内会派の新和会では現地視察を実施しました。そして現実を目の当たりにして余りの事実に愕然としたものです。
第1に、ダムを建設するところの水量が余りにも少ないことです。
毎秒1,2立方メートルでせせらぎくらいしか流れていません。オーバーな表現をすれば、天竜川の万分の1にも満たないとまで言うことができます。三倉川と合流する地点の冬期の流量は、1日3,800トンで我が故郷の伊佐地かわの10分の1にも及ばないこと、ダムを築造しても満水にするには1年もかかってしまうことがわかりました。
第2に、取水する地点ははるか下流で、しかもその水質が心配されることです。
太田川の水と、三倉川の水が合流して森町を流れ、生活排水が流入され
た下流の森町円田地区において取水しようというものです。さらに、周辺は水田地帯ですから、田植えの前後から8月頃にかけて除草剤をはじめとした農薬が大量に使用されますので尚のこと心配されます。
第3に、管網の整備や浄水施設に多額の投資が必要なことです。すでにかささぎ大橋へは、寺谷の浄水場からの送水管施設が、橋の建設に合わせて設置されていました。
第4に、受水する際の水価が高いことです。
当時は、1立方メートルあたり150円位かかるけれども努力して100円くらいにはしたい、との説明でした。
見直しにあわせて議会への説明がありました。私たちは、視察の結果や市民団体の方々の声をもとに、大幅な見直しを求めましたが、他の会派や県議会の議員さんたちは、すでに事業が進行していることを理由に同調してはいただけませんでした。それでも強く見直しを求めた結果として15,100トンへの見直しがされたものと理解しています。
今年の秋には、磐南5市町村が、合併効果によって水の融通ができることから、太田川からの受水をしなくても運用できるとして、県に対して水道施設整備計画を一時見合わせるよう要望書を提出しました。これに対しての県の考えは、見合わせることも、見直しをすることもしないと回答したと言うことです。
私たちも、この際見直しをすべきものとして、当局(上下水道部)へ提言いたしました。
第1の理由は、天竜川右岸の浜松市を中心とした地域においても、12市町村が合併することから、合併効果によって水の融通ができることから水需要にゆとりが生ずる。圏域内人口にしても県が示す数値が過大と思われる、さらに産業活動にしても構造の変化や景気の低迷によって水需要は下方修正すべきであると考えられること。
第2に、現在の社会情勢は本格的な少子高齢社会を迎え、現役世代の負担が増大し、年金や医療保険が崩壊してもおかしくない情勢にあることから、無駄と思われるものは少しでも排除していくことが求められること。
さらにいくつかの理由をあげて見直すように求めましたが、合併後の水需要については、地下水や渇水期について心配されることから太田川からの受水については、予定どおりにするということでした。
私は、太田川ダムそのものの建設については、異論を申し上げるつもりはありません。太田川流域の皆様は、過去において、堤防が決壊したことにより大きな被害を受けました。上流にダムがあったらと願うのは当然です。しかし、その水を水道水として利用しようということと、遠く天竜川右岸にまで持ってこようというのは、余りにも無理があるのではないかということです。
以上長々と述べてまいりましたが、端的に言いますと、県においては、「いまさらつべこべ言われても困る、たとえ無理やりにしても、一度合意したことについては最後まで付き合うのが当然だ。したがって、太田川ダムからの受水を拒否することは断じて許さない。」と、いうことのようです。
民間と違い、行政においては継続性を最優先する傾向が強く存在しています。浜松市においても、上部であるところの静岡県に対しては、他の施策や事業に対して様々な支援をいただいていますので、逆らうことができないのが実情のようです。
今回の公開質問状について申し上げます。貴方々がなさっていることは、議員にとっては大変なプレッシャーです。他の議員がどのような回答をなさるのかは判りませんが、私としては、新和会時代からの仲間と共に、常に問題提起をし、当局に働きかけてきたつもりでいます。太田川の問題は政治的な影響が極めて大きく、浜松市政全般・浜松市民の方々全般のことを常に念頭において取り組む責務を担わされている私たちには立場がありますので、軽々に意思の表明をすることは避けさせていただきます。
願わくは、同じ問題について、静岡県議会議員の方々にお尋ねになり、私たち市議会議員と、県の先生方との違いについて、調査していただけたら幸甚です。
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